クズの学名がtaxon swap(学名の置き換え)により2020年03月06日に変更されました。
https://www.inaturalist.org/taxon_swaps/45702
これにより、和名で「クズ」を検索すると、変更後の学名が参照されるようになります。
YListには非準拠となってしまいますが、日本国外で侵略的外来種となっていることを鑑み、また全世界的にユーザーの利便性を図るためにも、キュレーターガイドに則ってPOWOがacceptedとした学名へ統一するという今回の対応は、私としては正しい判断だったと考えています。
POWO (Pueraria lobata (Willd.) Ohwi) ※synonym
http://plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:214449-2
POWO (Pueraria montana var. lobata (Willd.) Maesen & S.M.Almeida ex Sanjappa & Predeep)
http://plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:967441-1
自分自身が関わった変更ではありませんが、お知らせと備忘録として投稿しておきます。
@でお知らせいただきました @harumkoh さん、ありがとうございました(flagにずっと気づかず、また変更確定に返信間に合わず申し訳ありませんでした…)。
余談ですが、種内分類群で今回のswapに伴って移された
Pueraria lobata ssp. thomsonii → Pueraria montana var. thomsonii
は、Catalogue of Life 2019ではPueraria montana var. chinensis をaccepted nameにしています。
http://www.catalogueoflife.org/annual-checklist/2019/details/species/id/e7019ca2eb47bd39c42c032743dad930/synonym/eecee8f7db02decd0fa78cdc7d639ff9
また詳しい経緯を追いかけてみたいと思いますが、
シナクズ(Pueraria montana ssp. chinensis)とPueraria montana var. thomsoniiは、統合の必要があるのかもしれないです。
https://www.inaturalist.org/taxa/627634-Pueraria-montana-chinensis
評論
ご連絡ありがとうございます。
今回は命名規約上の問題では無く、クズをPueraria lobataという独立種と見るか、Pueraria montana の変種と見るかの分類の問題ですね。iNaturalistはPOWOに従うとしているので、今回のswapは良いと思います。
ここからはiNaturalistを離れての内容ですが、クズの系統関係は調べられているようです。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1365-3180.2005.00462.x
この結果ではPueraria lobata(参照論文中のクズ)はP. thomsoniiと最も近縁で、次にP. edulisと近縁です。その次に近縁なのがP. montana(論文中のタイワンクズ)です。分類学的にはP. lobataをP. montana var. lobataとするためには、POWOで独立種になっているP. edulisもP. montanaに含める必要があり、POWOの分類には矛盾があります。
YListではPueraria lobataを独立種のクズとし、P. lobata subsp. thomsonii(シナクズ)、P. montanaを独立種のタイワンクズとしているのでこちらの方が種の認識としては矛盾がありません。
長期的には①P. montanaをP. edulisも含めた1種にするか、②P. lobata、P. edulis、P. montanaの少なくとも3種に分けるかに収束すると思います。
私は葉でクズとシナクズとタイワンクズを識別することはできません。花があるとthomsonii(シナクズ)はよりタイワンクズに似ているので、シナクズはタイワンクズの種内分類群にしてほしいところですが、これだと系統関係上クズの姉妹群をタイワンクズの種内分類群にしてしまうので矛盾が生じます。
個人的には命名規約上問題なのは間違った学名を使うことになるので、POWOに関わらず変更するのは良いと思います。
明らかに形態的に識別可能な分類群もPOWOに関わらず識別できた方が利益が大きいと思います。
ある分類群がどの種に含まれるのかについては種の境界をどこに持っていくか主観が含まれる問題なのでiNaturalistがPOWOに従うのであればPOWOに従うで良いと思います。長期的には系統関係が分かるとそのうちPOWOに反映され、iNaturalistに反映されるという流れだと思います。
@keitawatanabe さん
いつも文献を詳細に当たっていただいてありがとうございます。
分子系統解析が既になされていたのですね。勉強になりました。論文はまだ斜め読みした程度なので、ゆっくり読んでみます。
分類群の整理については自分も同じ考えでいます。POWOでは、最近(数年前くらいまで)に記載された学名は、きちんと拾われている印象があります(例えばシナノキンバイ、ハチオウジアザミなど)。
逆に、20世紀後半までに分類が安定してそのままになっている種で、なにかと異名などの問題が起きやすい状態となっているように感じます。
また何かあればコメントいただけると参考になります。
@keitawatanabe さん
はじめまして、コメント失礼します。
いきなりで申し訳ないのですが、クズの分類について聞きたいことがあり、コメントさせていただきました。
早速質問なのですが、クズとシナクズの定義についてご存知でしょうか?
この質問の背景として、私事ですが、私は現在クズの種鑑定について調査を行なっており、特に遺伝子によるクズ(P.montana var lobata)とシナクズ(P.montana var thomsonii)の分類について調べています。
ある論文において、『クズとシナクズの遺伝子解析を行い、ITS2領域で違いがあったため、クズとシナクズはITS2領域の遺伝子配列を解析することで分類できる』という記載がありました。ここで一つ疑問が発生したのですが、『クズとシナクズの遺伝子解析を行い〜』とありますが、このサンプルがクズでこのサンプルがシナクズであるということはなぜ分かっているのでしょうか?遺伝子の他にクズとシナクズの定義に違いがあり、そこで判断しているのでしょうか?
文章下手で申し訳ないのですが、要は『遺伝子の他にクズとシナクズの違いを定義するものがあるのか』ということが知りたいのです。植物に関して、知識がまだまだ浅く、小さいことでも何かご存じであれば、是非お力添えをお願いしたいです。何卒、よろしくお願いいたします。
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