https://www.inaturalist.org/flags/472963
こちらの備忘録として残しておきます。
タネツケバナに充てる学名は、参照する図鑑やwebサイトによってばらつきがあります。また、YListでも2011年頃と今では採用している学名が異なっています。
wikipediaの脚注を参照) https://ja.wikipedia.org/wiki/タネツケバナ
今回、YList, POWOに加えて、工藤(2017)による詳細な解説を確認できたので、フラグを立てていただいたとおり、C. scutataの和名から「タネツケバナ」を削除し、名称の管理→日本の既定名称から「オオバタネツケバナ」へと変更しました。
工藤(2017) https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010920812.pdf
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かつてタネツケバナと呼んでいたCardamine fiexuosa With. は、ユーラシア大陸に広域分布するものとされていたのですが、Marhold et al. (2016)によって、東アジアに分布する分類群は、タイプ産地(ヨーロッパのブナ・トウヒ林縁)と地理的分布、生態特性、更には遺伝的にも異なることが判明しました。
そこでCardamine fiexuosa With.のシノニムのうち東アジアで最も早く記載された学名を用いて、東アジア産の分類群をCardamine occulta Hornem., Suppl. Hort. Bot. Hafn.: 71. 1819として記載したようです。このとき、中国で2014年に採集した標本をエピタイプとして指定しています。
Marhold et al. (2016) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4856903/
エピタイプの画像: http://dataflos.sav.sk:8080/scans/sav/jpeg/SAV0006529.jpg
一方でCardamine scutata Thunb. はツンベルグが1794年に日本で採集した標本に基づいて記載されていますが、このタイプ標本がタネツケバナかオオバタネツケバナかを明瞭に判定できるものでなかったため、その後混乱を招いたようです。
ちなみに、これはタイプ標本そのものではないですが、ツンベルグの標本画像データベースでCardamine scutataを検索すると下のような画像が出てきます。
http://cpthunberg.ebc.uu.se/specimens/14990
もしかしたら、この画像のように花が無くて背丈の低い個体がタイプ指定されているのかもしれません。
いずれにせよ、工藤(2017)では、タネツケバナとして明瞭に同定できる学名がCardamine occultaに限られている以上は、現在の知見ではCardamine scutataはオオバタネツケバナであるとの結論に達しています。
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